肝臓移植手術は大きな手術です。お腹の傷は大きく、お臍の上を通る‘メルセデス・ベンツ・マーク’の傷になります。病気の肝臓を取り去った後に、脳死肝移植では亡くなった提供者の肝臓全体(大人から子供の場合は肝臓の一部)を、生体肝移植では肝臓の一部分を移植します。図の上と下は、肝臓のそれぞれ左側と右側を用いた生体肝移植の場合で、いずれも、肝臓の入り口の血管2種類(門脈肝動脈)と出口の血管(肝静脈)をつなぎ、肝臓で作られた胆汁を運ぶ道(胆管)を本人の胆管や腸とつなぎます。生体肝移植は、提供者の肝臓を枝の単位で切り取って新しい環境に植える‘挿し木’のようなもので、残った木も植えられた‘挿し木’もそれぞれの環境で育っていきます。

肝臓病の方は、いろいろな原因で血が止まりにくく、新しい肝臓がその環境を変えるまでには相当の時間がかかります。手術には、多くの場合輸血が必要です。移植手術は大変時間のかかるもので、平均で10-12時間を要します。時には、つないだ血管から滲みが出たり、つなぎ目が詰まって再手術が必要な場合もあり、しばらく注意が必要です。胆管のつなぎ目は、滲みがあると腹膜炎を起こし、後になって引きつれ(狭窄)が起きる場合もあります。引きつれの場合には内視鏡やカテーテルで治療するか、再手術が必要になる場合もあります。

脳死肝移植では、大人の場合、提供された肝臓全体が移植されることが多く、肝臓の機能の回復も生体肝移植より速くなっています。しかし、時には提供していただいた肝臓が提供者の病気や怪我のために傷んでいる場合があり、極端な場合には、移植された後でまったく働かないことがわかることがあります。現在の技術を集めても、こうした‘無機能移植肝’の発生する確率は数パーセントあります。移植された肝臓が働かないときには、再度別の肝臓を移植するしかないのですが、現在の状況では、これができる可能性はほとんどありません。

一方、生体肝移植でも、移植後の経過の中で、こじれた拒絶反応などのために、移植された肝臓の働きが身体を支えるのに充分でなくなることが数%に起こります。この場合には、再度移植が必要になりますが、再移植は一般に最初の移植よりは難しいものになります